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花豆の戻し方(吸水時間について)

その他

こんにちはオンラインショップあんずです!
今回は紫花豆の給水時間について実験をしてみたのでご紹介いたします。

紫花豆とは?

正式名称は「ベニバナインゲン」。直径約3cmと大きく、紫と黒のまだら模様が特徴的な豆です。

紫花豆

栽培条件が難しいことで知られており、標高が800m以上の地域でなければそもそも実がつきません。

日本国内では北海道や群馬県、長野県の高地などで栽培されています。ちなみに長野県の紫花豆は他の地域よりも粒が大きく、最上級品とされています。

栄養価が高く熱烈なファンも多い花豆ですが、同時に希少性も高く、栽培している農家さんは年々減少しています。

花豆の吸水時間について

花豆の吸水(戻す)にはかなりの時間が必要です。他の豆類が一晩(6〜8時間)水に浸けるだけで吸水が終わるのに対し、花豆は最低でも丸1日(24時間)以上、豆の乾燥状態によっては2日〜3日かかると言われています。

……ところが!

先週、近所の直売所に寄った際、ふと花豆コーナーを見るとこんなものが貼られていました↓

「花豆をおいしく煮るには冬場は5日〜7日朝晩毎日水を換えて豆がパンパンになるまでひたして下さい」

冬場は5日〜7日!?

“冬場は”と言っても、そもそも花豆が市場に出回るのが10月下旬〜3月頃まで。花豆をお正月のおせち料理として使われる方も多いので、花豆を吸水させるのはほとんど冬場になるはず……

吸水に5日〜7日……それはいくらなんでも吸水させすぎなのでは? 本当にそんなに吸水が必要なんでしょうか?

いざ吸水実験!

そういえば花豆の吸水にかかる時間を正確に測ったことはなかったなと思い、いい機会なので実際にどのくらいの時間で吸水するのか実験してみました!

より吸水していく過程がはっきりとわかるように、表面が凸凹とした歪な花豆で実験します。(農家さんから仕入れたばかりの無選別で、まだ汚れの残っている花豆を使用しています)

この時点での直径は33mmです。

1日後(24時間経過)直径40mm。
水を吸って一気に大きくなりました。歪さがなくなって豆らしい形に、表面の凸凹はまだ残っています。

花豆は皮→実の順に吸水が進みます。そのためこの段階では、見た目こそ大きくなったように見えますが、中の実はまだ吸水していないので豆がヘコヘコとしています。

2日後(48時間経過)直径41mm。
吸水が進み、1mm大きくなりました。中の実が膨らんできており、凸凹が少なくなってきているほか、写真では分かりにくいですが豆に厚みが出てきており、ボリューム感が増しています。

3日後(72時間経過)直径42mm。
さらに吸水が進み、1mm大きくなりました。凸凹がなくなり、豆の表面がなめらかに。中の実も十分に吸水したようで、豆を押してみてもヘコヘコせず、皮と実の隙間がなくなっています。

また、一番最初に花豆を水に浸けた時は浮いていたのですが、3日後には沈むようになりました。

一般的に水に浮く豆は秕や虫食いなどの悪い豆なので取り除く場合が多いですが、花豆は別。花豆は豆の大きさに対してとても軽いため、ほとんどの豆が水に浮きます。(しっかりと乾燥している豆ほど浮きやすいです)吸水が進むにつれて徐々に豆が重くなり、沈んでいきます。

この後も4日、5日と花豆を浸けたままにしておきましたが、これ以上の変化は見られなかったです。

ということで今回の花豆の吸水にかかったのは3日間!

なんだ5日間もかからないじゃん。と思いつつも思ったより時間がかかったなという印象でした。1日〜2日で完全に吸水すると思っていたのですが……

ちなみに今回使用した豆は今シーズンの新豆になります。新豆の方が古い豆よりも吸水にかかる時間が短いというのが定説ですが、新豆で3日かかるということは古い豆だとそれこそ5日間ぐらい必要かもしれません。

しっかりと乾かした花豆の賞味期限は収穫から約2年ほど。ですが、花豆の農家さんによると保存状態さえ良ければ5年前の豆でも時間をかけて吸水させればちゃんと戻るそうです。

結局、吸水にかかる時間は?

残念ながら正確な時間というのはなく、吸水時間は花豆の乾燥状態によって変わるということしか言えません。

というのも、これまで花豆を何度か戻してみて分かっているのは、毎回吸水にかかる時間が違うということ。

早い時は1日で戻ることもありますし、逆に今回みたいに3日近くかかることもあります。また、乾燥状態以外にも気温や水温などでも吸水時間は左右します。

じゃあどうすればいいのか?

それは……
できる限り吸水時間を長くすること!

十分に吸水させないまま煮てしまうと、豆が固くなるというデメリットはありますが、吸水しすぎて豆に悪影響が出るということはありません。(1週間以上など、極端に長く浸けすぎるのはもちろんNGです)

なので、とりあえずどんな状態の花豆だろうとまずは最低2日間(48時間)は浸けてみる! その後は、豆の状態を見ながら臨機応変に対応するというのがいいのではないかと思います。

明確に花豆の吸水が終わった目安はコレだ! ということは言えませんが、目安になりそうなポイントは以下のとおりです。

  • 豆が水に沈んだ
  • 表面のシワが伸びきった
  • 豆がパンパンにふくらんでいる

こんなところでしょうか。(あくまで目安です)

その他、花豆を吸水させる際のポイントとしては2点。

  • 吸水にムラが出ないよう水はたっぷり使うこと
  • 長時間水につけていると水が悪くなってきてしまうのでこまめに水を換えること

これらのことに気をつけていただければ花豆の吸水はバッチリだと思います!

※直売所に貼られていた紙について
冬場は5日〜7日吸水させてくださいとのことですが、これはおそらく花豆を吸水不足のまま煮て失敗する方がいないよう少し大げさに注意喚起しているのではないかと思われます。試しにこちらの直売所で花豆を買って吸水させてみましたが2日で吸水できました。

花豆を短時間で早く戻す方法はあるの?

吸水に時間がかかるのは分かったけれど、そんなに待てない。なんとか吸水時間を短縮できないものか……

他の豆類であれば「熱湯でゆでた後蒸らす」「炊飯器や魔法瓶を使う」といった方法があります。が、その方法を花豆でも試してみたことがあるのですが、どれもうまくいきませんでした。

「熱湯でゆでた後蒸らす」というのは他の豆だとかなりの時短になっていたのですが、花豆だとそんなに時間が変わらずかえって手間。

「炊飯器や魔法瓶を使う」というのもやってみましたが、戻している間に花豆から出たアクが再び花豆に染み込んでしまい、そのあとで鍋に入れて何度かゆでこぼしたのですが、アクが取れずにえぐみの残る味になってしまいました。

※戻る時間はたしかに短縮できたので、アクの問題さえ解決できれば方法としてはかなり良さそうです。

紫花豆は他の豆類に比べて特にアクが強いです。何度もゆでこぼしてしっかりとアクを取らないと豆にえぐみが残ってしまい、甘煮などにしても後味の悪いものになってしまいます。ゆでこぼしは最低3回は行いましょう。

アク抜きがうまくできず、ほろ苦い甘煮になってしまった場合はインスタントコーヒーを加えて煮直し、コーヒー煮にしてしまうのがオススメです。アクの苦みが気にならなくなりますよ。

花豆を早く戻す方法は当店の方でも模索中。今のところは、時間がかかったとしても普通に水で戻すのがいいという結論にいたっています。何かいい方法を見つけられたらまた紹介させていただきます。

まとめ

花豆は他の豆類よりも扱いが難しく、栽培・吸水・調理、どれをとっても一筋縄ではいきません。花豆を煮るのが上手なお客さんに話を聞いても、花豆の扱いについての明確な正解はなく、経験よるものが多いとのこと。その方いわく「花豆を上手に煮えたら一人前」だそうです。

扱いが難しい花豆ですが、その栄養価の高さ、他の豆にはない独特の風味やごろっとした大きさはなによりの魅力だと思います。

今回は花豆の吸水について記事を書かせていただきました。微力ではありますがご参考にしていただき、おいしく花豆を味わっていただければ幸いです。


執筆/オンラインショップあんず